経営理念やミッション、ビジョンは行動に落としこまなければ、ただの理想で終わってしまいますし、結果として企業の衰退へとつながります。
ただ、社員自ら主体的に理念へコミットし続けるのは、特別なタスクや仕組みを設けなければなかなか難しいものです。経営者からのコミットを求められて、その重要性に納得していても、実際にどう行動すればいいかは行動指針やクレド止まりになっていることでしょう。
今回は、企業のビジョン、社員・個人としての目標、そして実際の行動について、相互の関連性を考え、社員・個人がビジョンに向かって強烈に動いていくための方法を解説します。
組織のビジョンに社員からコミットする方法
◆「手軽に手に入る情報には可食部がない」ことを認識する
理念やクレドなどに記された言葉のそのままの意味や、ネットで短時間で調べた結果の答えなど、目の前のやすやすと手に入る情報、それ自体では本当に大事な情報は含まれていません。
やはり、優れた成果を出す人は、本を読み込んで得た情報や実際に自らの手足で得た情報をもとにしています。
これはネットの限界であり、言葉どおりの意味には限界があることを認識しておくことが大切です。
分かった気になってしまっていることを自覚できていれば、決して思考は止まらないでしょう。
◆小さな成果と大きなビジョンを併行させる
ビジョンのような大きな目標は組織規模のものであって、フリーランスやサラリーマン副業としてはそれどころではなく、小さな成果を出し続けなければなりません。
まだ信用が十分でない個人はビジョンの拡散よりも、目の前の仕事で結果を出し土台を固めることを優先することになります。
組織のこの力が働けば大きな成果を出せることは間違いありません。
ただ組織を構成する個人の覚悟と実力がなければ、この土台すら固まりません。
組織として動くことが本質ではありますが、企業と個人の衰退を避けるのであれば、「働く形態」としての「フリーランス」「会社員」の意味を超えて、両者の考え方や仕事のやり方を取り入れることからは避けられないのではないでしょうか。
今できることをすぐやる・大志を抱く。両方を同時にやっていくことでより確実な方向に進めるのではないでしょうか。
企業がイノベーションと理念形成の両方をやっていかなければならないことと共通しています。
◆ 主語を自分に置き換える
企業の経営理念やミッション、ビジョンに強くコミットする具体的な方法としては、組織の主語を自分に置き換え、自分ごととして捉えることです。
また思考を実際に書き出してみる、社員間で理念に関する同じテーマについて話し合うなども具体的アプローチのひとつです。
自分の言葉でどこまで具体的に語れるか、つまり自分ごととしてアウトプットする機会の積み重ねが、企業と個人の理念の活性化につながります。
関連記事
◆絵、イメージで表現してみる
言葉ではフレキシブルに思考を拡げるネックになることがあるため、理念のような抽象的な概念の意味を表現しづらい場合は、絵やイメージとして出力するといいでしょう。
組織とともに変化し腐敗を避ける
ビジョンを追い求める者が現状維持に甘んじている者を蹴落としていくのは、組織も個人も共通しています。
ジャンクな情報ではなく可食部の多い情報、目的としての大志ではなく手段としてのビジョン、人ごとではなく自分ごと。
目の前の情報を深化できることがそれ自体でひとつの変化といえるでしょう。
参考:ジム・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』(日経BP社, 1995年)